CNC Path Analyzer

G83ペックドリリングサイクル:Qの切込み、R点、G98・G99の復帰高さを理解する

マシニングセンタのG83ペックドリリングサイクルを3穴の例で説明します。Qの切込みと切りくず排出、R点と初期点の違い、G98・G99の復帰の選び方、G73との違い、旋盤のG83でRの意味が変わる点を扱います。

深い穴でドリルが折れる理由

ドリルが深く入るほど、切りくずは細い溝に沿って上へ抜け出なければなりません。穴の深さがドリル径の3倍を超え始めると、切りくずが溝の中にたまり、切削油も刃先まで届きにくくなります。たまった切りくずがドリルを締め付けるとトルクが急激に上がり、ドリルが折れます。

ペック(peck)ドリリングは、少し穴をあけ、穴の外へ抜けて切りくずを払い、また入る、を繰り返す方法です。G83はこの繰り返しを1ブロックで処理する固定サイクルです。

ブロックの構成

アドレス意味例の値
X Y穴の位置X10 Y10, X30, X50
Z穴底の深さZ-25
RR点:早送りから切削送りに切り替わる高さR3(素材上面の3mm上)
Q1回の切込み深さ(インクリメンタル、常に正)Q5
F切削送りF120 mm/min
G98/G991つの穴が終わった後に戻る高さ下の説明を参照

1穴を加工する動作の流れ

  1. 現在の高さ(初期点、例ではZ30)からR点Z3まで早送りで下降します。
  2. Qの分(5mm)だけ切削送りで入ります。
  3. R点まで早送りで完全に抜け、切りくずを排出します。
  4. 直前の深さより少し上(制御装置のパラメータで決めた余裕d)まで早送りで再び下ります。
  5. 再びQだけ削ります。穴底Z-25に達するまで3〜5を繰り返します。
  6. G98なら初期点、G99ならR点に復帰します。

3穴の例

固定サイクルはモーダルなので、G83を一度指令した後は座標だけを書けば同じ条件の穴が続けてあきます。図で穴ごとに上下するのこぎり歯の形がペック動作で、最後の穴の後だけ高く上がることが分かります。

深さ25mmの穴3つをQ5のペックで加工し、最後の穴だけ初期点に復帰

O2007
T5 M6
G21 G90 G17 G94
G54
S1200 M03
G00 X10. Y10. Z30.
G43 H5 Z30.
G99 G83 X10. Y10. Z-25. R3. Q5. F120
X30.
G98 X50.
G80
G00 Z100.
M30
深さ25mmの穴3つをQ5のペックで加工し、最後の穴だけ初期点に復帰 — XY 経路XY
破線の淡い青はG00早送り、オレンジの実線は切削移動です。円弧は計算した曲線として静的に表示します。

上図はこのプログラムをCNC Path Analyzerで解析した結果です (早送り 40 区間, 直線切削 18 区間).

G98とG99はどう選ぶか

G99(R点復帰)は穴の間の移動距離が短く、サイクルタイムが短くなります。穴の間にクランプ、段差、ボスのような障害物がないときに使います。G98(初期点復帰)はサイクルを始めたときの高さまで上がるので、次の穴へ向かう途中に高い障害物があるときに安全です。

例では最初の2穴をG99で素早く処理し、最後の穴でG98に切り替えて初期点Z30まで上がってからサイクルを終えます。実務では、穴の配置と治具の形を見て、穴ごとにG98/G99を混ぜて使うことがよくあります。

G73との違い

G73は高速ペックドリリングで、毎回R点まで戻らず短い距離だけ後退して切りくずを分断します。移動距離が短いので速いのですが、切りくずが穴の外へ完全には出ません。切りくずが分断されやすい材質の比較的浅い穴にはG73、深い穴や切りくずが長くつながる材質にはG83が基本の選択です。

ドリルの先端角とサイクルタイムの見積もり

Z-25.はドリル先端の深さです。一般的なドリルは先端が118°でとがっているので、直径いっぱいで25mmまであけたいなら、先端部の長さだけさらに下げる必要があります。先端の長さはおおよそ直径 × 0.3なので、Ø8のドリルなら約2.4mmを足してZ-27.4程度を指令します。止まり穴(ブラインドホール)でタップの深さを確保するときに特に重要です。

サイクルタイムも見積もれます。R3からZ-25までの28mmをF120で削ると、正味の切削だけで14秒です。Q5なら穴1つにつき5〜6回R点まで抜けては戻るので早送りの往復が加わり、深くなるほど往復距離も長くなります。3穴なら切削だけで約42秒なので、切りくず排出に問題がなければ、Qを大きくするかG73に変えるだけで時間を短縮できる余地があります。

旋盤でG83を見るときの注意

旋盤のG83(端面ドリリング)は、マシニングセンタとアドレスの意味が同じとは限りません。FANUC旋盤系の一部の形式では、Rが初期点からR点までのインクリメンタル距離として解釈され、Qに小数点を許さないこともあります。同じ文字列でも、設備の種類と制御装置のシリーズによってまったく別の深さになり得ます。

この違いがあるため、CNC Path Analyzerは旋盤G83のRの意味が確定していないと経路をでっち上げず、ユーザーに解釈方法を確認するよう案内します。関連する動作は経路エラーの解決で扱っています。

よくある質問

G80を書き忘れるとどうなりますか?
固定サイクルが有効なまま残り、次に出てくるX・Yの移動ブロックごとにまた穴をあけようとします。サイクルが終わったら必ずG80でキャンセルしてください。
Qはどれくらいにすればよいですか?
一般的な鋼材では、ドリル径の0.5〜1倍程度から始めて切りくずの状態を見て調整することが多いです。工具メーカーの推奨値があれば、そちらが優先です。

次のステップ

CNC Path Analyzerで経路を確認