CNCの加工時間計算:切削距離・送り・早送り・非切削時間に分けて見積もる
旋盤の外径2パスの例で、切削時間 = 距離 ÷ 毎分送りの計算、回転当たり送りの換算、早送りや工具交換のような非切削時間、シミュレーション時間と実際のサイクルタイムが違う理由を説明します。
見積もりの基本の式
加工時間計算の出発点は単純です。切削時間(分) = 切削距離(mm) ÷ 毎分送り(mm/min)。回転当たり送りで書かれたプログラムなら、まず毎分送り = F(mm/rev) × S(rpm)に換算します。これに早送り、工具交換、主軸の加減速、クーラントやドアのような補助動作の時間を加えるとサイクルタイムになります。
見積もりを狂わせるのはたいてい式ではなく、抜け落ちた項目です。切削時間だけで見積もると実際より短く出るのが普通で、部品が小さいほど非切削時間の比重が大きくなります。
例のプログラム
S1000、F0.25でØ50とØ46の外径をそれぞれ62mmずつ2回旋削
O3008
T0101
G21 G90 G18 G40 G99
G97 S1000 M03
G00 X52. Z2.
G01 X50. F0.25
Z-60.
G00 X54. Z2.
X46.
G01 Z-60. F0.25
G00 X100. Z100.
M30上図はこのプログラムをCNC Path Analyzerで解析した結果です (直線切削 3 区間, 早送り 3 区間).
例の切削時間を自分で計算する
旋盤のXの移動距離は直径差の半分であることに注意してください。X52からX50への切込みはプログラム上2mmですが、工具は1mmしか動きません。またZ2から出発するので、素材端面の手前2mmのエアカットも切削時間に含まれます。アプローチの余裕は安全のために必要ですが、数百個を繰り返す量産では、この数mmが積み重なって意味のある時間になります。
| 区間 | 距離 | 毎分送り | 時間 |
|---|---|---|---|
G01 X50.の切込み | 直径2mm → 半径1mm | 0.25 × 1000 = 250 | 約0.24秒 |
Z-60. 1パス目 | 62mm(Z2 → Z-60) | 250 | 約14.9秒 |
G01 Z-60. 2パス目 | 62mm | 250 | 約14.9秒 |
| 合計 | 約125mm | - | 約30秒 |
早送りの時間
早送りは機械の最高速度で動きますが、0秒ではありません。早送り速度が毎分20mの旋盤で、例の早送りの移動距離を合計すると200mm余りで、正味の移動時間は1秒未満です。しかし軸ごとに加速・減速の区間があるため、短い早送りを何度も行うと実際の時間は計算よりずっと長くなります。短い移動の多いドリルパターンやペックサイクルでは、特に差が大きくなります。
見積もりでよく抜け落ちる時間
- 工具交換:タレットの割り出しやATC1回に、通常数秒かかります。工具が10回替わるプログラムなら、これだけで数十秒です。
- 主軸の加減速:停止から3,000rpmまで、あるいは正転から逆転に切り替わるタップサイクルのように、回転数が大きく変わるたびに時間がかかります。
- G96の回転数変化:周速一定制御で直径が変わると回転数がそれに従って変わり、回転当たり送りの毎分速度も一緒に変わります。端面加工の時間は、固定回転数の仮定より短くも長くもなり得ます。
- コーナーでの減速:短いブロックが続く輪郭やCAMの出力は、コーナーごとに減速して、プログラムしたFに達しません。
- 素材の交換と測定:プログラムの外の時間ですが、実際の時間当たり生産量を決めます。
シミュレーション時間の使い方
CNC Path Analyzerは、対応するブロックの距離と送り、回転数を使って参考加工時間を計算します。加減速と工具交換の時間は機械ごとに異なるため含めていません。そのためこの値は、実際のサイクルタイムの下限に近いと考えるのが妥当です。
実務で役立つ方法は、同じ設備で実際に測ったサイクルタイムと計算値の比率を一度求めておくことです。たとえば似た部品で計算3分、実測3分40秒だったなら、補正係数約1.22を次の見積もりに掛けてみることができます。部品の種類(短い移動が多いか、長い切削が多いか)が似ているほど、この係数はよく合います。
加工時間を短縮する前に確認すること
計算してみると、時間がどこに使われているかが見えます。切削時間がほとんどなら切削条件とパス数(G71とG72の選択など)を、非切削時間が大きいなら工具の順序、アプローチの余裕、早送りの経路をまず見ます。送りを速くするより不要な移動をなくすほうが、安全で効果も大きい場合が多くあります。