G96周速一定制御とG97・G50:端面加工で回転数が変わる仕組み
旋盤のG96周速一定制御がXの直径に応じて回転数を変える計算、G50最高回転数制限が必要な理由、ねじ・ドリルでG97に戻すべき場合を、端面加工の例で説明します。
切削速度は回転数ではなく表面の速度
工具カタログの推奨条件は、ふつう切削速度V(m/min)で示されます。工具の刃先を素材の表面が1分間に何メートル通過するかという意味です。同じ回転数でも、直径が大きければ表面は速く、小さければ遅く通過します。回転数Nとの関係はV = π × D × N ÷ 1000です。
外径を一定の直径で削るときは回転数を固定してもVは変わりませんが、端面加工のようにXが小さくなり続ける作業ではVが下がり続けます。中心側の面が粗く、外側と色が違う端面は、たいていこれが原因です。
G96:制御装置が回転数を計算し直し続ける
G96 S200は「切削速度を200m/minに保て」という指令です。制御装置は工具の現在のX位置(直径)を読み、N = 1000 × 200 ÷ (π × D)をリアルタイムで計算して主軸回転数を変えます。Ø60では約1,061rpm、Ø20では約3,183rpmになります。
このときのXの直径は工具の刃先基準なので、工具形状補正とワーク原点が正確でないと計算も正確になりません。Xの原点が実際の主軸中心とずれていると、プログラムがØ10と思っている位置が実際にはØ14であることもあり、回転数もその分ずれます。
| 現在の直径 | G96 S200の計算回転数 | G50 S2500適用後 |
|---|---|---|
| Ø60 | 約1,061rpm | 1,061rpm |
| Ø40 | 約1,592rpm | 1,592rpm |
| Ø25 | 約2,546rpm | 2,500rpm |
| Ø10 | 約6,366rpm | 2,500rpm |
| Ø0(中心) | 無限大 | 2,500rpm |
G50最高回転数制限が必ず必要な理由
表のとおり、直径が0に近づくと計算上の回転数は際限なく大きくなります。制限がなければ主軸は機械の最高回転数まで上がり、チャックの把握力は遠心力のため回転数が高いほど弱くなります。大きな素材を弱い把握力で高速回転させると、素材が飛び出す危険があります。
そこでG96を使う前に、G50 S2500のように最高回転数を指定します。この値は工具ではなく、チャック、爪、素材の大きさと重さで決めます。長い棒材が主軸の後ろに突き出しているなら、さらに低く設定する必要があります。
例の経路
端面をX62.からX-0.8まで削る間、回転数は約1,027rpmから始まり、Ø25付近から2,500rpmの上限に張り付きます。中心を少し越えたX-0.8は、工具の刃先半径のために中心に小さな突起が残るのを防ぐための値です。図には経路しか見えませんが、端面の区間ではずっと回転数が変わっていることを思い浮かべながら見てください。
G96 S200でØ60の端面を中心まで削り、Ø56の外径を旋削した後G97に切り替え
O3005
T0101
G21 G90 G18 G40 G99
G50 S2500
G96 S200 M03
G00 X62. Z0.2
G01 X-0.8 F0.12
G00 Z2.
X56.
G01 Z-30. F0.2
G00 X62. Z2.
G97 S800
G00 X100. Z100.
M30上図はこのプログラムをCNC Path Analyzerで解析した結果です (直線切削 2 区間, 早送り 4 区間).
G97に戻すべき作業
- ねじ切り:G76やG92のねじは、パスごとに同じ位置かららせんが始まる必要があります。回転数が変わるとねじ山がずれるため、
G97 S_の固定回転数を使います。 - センタードリル・ドリル・タップ:工具がX0(中心)にあるので、G96ではすぐに最高回転数になります。ドリルの条件に合った回転数をG97で直接指定します。
- 工具交換位置へ大きく移動するとき:Xが大きな値へ行くとG96は回転数を下げ、戻ってくると上げます。不要な加減速を減らすため、交換前にG97に切り替えることがよくあります。例の
G97 S800がその例です。
ツールによる加工時間の見積もりの限界
回転当たり送り(G99)とG96を一緒に使うと、毎分送りの速度も回転数に応じて変わります。CNC Path Analyzerの加工時間は、対応する条件でこの変化を反映した参考値で、実際の主軸の加減速時間は含みません。送りの単位はG98・G99の送り単位に続きます。